2011年8月3日水曜日

『写真家と芸術論』 エルンスト・ハース(Ernst Haas)

エルンスト・ハースは美しいものと遭遇すると感動して涙が出るという。
つまり泣く時は美しいものを見たときなのである。
 彼は普通の人なら見逃すような物に美を見出す。
写真で撮るとヨットの帆はぶれて見えるケースが少なくない。
彼はそのぶれに美しさを見出す。
また街の壁に貼ってある、ポスターが破れて居るのを見て撮る。そこに美を見出すハース。
極めつけは、泥だらけの道に落ちている大きな手袋。
それは泥で薄汚れて居る、ハースはそれにも美を見つける。

 ハースは人が気がつかないところにも美を見出せる天才的な感性の持ち主。もちろん、美しい花を見るとさらに際立って美を見出せるというわけである。

 彼は世界中をカラーで撮ってきた。とりわけ、コダクロームのフィルムを愛した。プリントは染色技術を用いたダイトランスファーという精緻なものを愛した。
このダイトランスファーのプリントでの展覧会が日本で巡回した。1990年代である。

 このダイトランスファーのオリジナルプリント二種(天地創造シリーズと花のシリーズ)が1980年代に日本でも売り出され、かなりの人々が手に入れた。
筆者もその一人である。筆者は天地創造のシリーズを入手。
これは『天地創造』というカラー写真集から10点を選んだものである。
混沌の中から大地や海が現れ、生物や鳥類ほかの動物そして最後にアダムとイブという内容の有名な写真集で、世界中に人々をうならせる出来栄えであった。

 ハースの日本での展覧会では米国のハースを取材したTV番組のビデオが上映された。
そこでハースは美とは人がどう思うかでなく、自分が満足できるかどうかが基本であると述べていた。
賞狙いやコンテストに提出するというのは二の次ぎ・三の次ぎで、自分が納得・満足することが肝要だという。

 満足が行く写真を撮ろうとする姿勢、撮った写真からいいものを選択する審美眼、それが写真の芸術性の支えである。

 余談だがハースは美を求めてインドやヒマラヤほかアジアをさまよい歩いたが
結局アジアにある良いものが日本に取り入れられ、残っていると言う。
 そして日本は残された自然も美しいがゆえにハースは日本を愛して撮影した。
 カラーの魔術師と評されるハース、深い色の世界、日本人と共感できる所以である。

 ハースについて知るためには、まず図書館などで『The Creation 天地創造ーエルンスト・ハース写真集』
(1993年5月 小学館)などを見るのが良い。

 ネットで検索すると以下の通り、
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creation『The Creation 天地創造ーエルンスト・ハース写真集』(1993年5月 小学館)は色彩の魔術師が捉えた美しい地球と生き物 ... このエルンスト・ハースの「ザ・クリエイション」を参考に、日本の天地創造に挑戦しながら写真の整理をしていくつもりです。 ...
www.bunakou.com/creation.htm - 2k - キャッシュ - 関連ページ

あるいは 
2005年01月27日  http://www.edita.jp/shimizu/one/shimizu396719.html
私の好きな写真家/エルンスト・ハース
エルンスト・ハースという写真家がいる。私は彼の写真が好きだ。彼の写真は美しいだけではなく世界がある。動きのあるものはその動きを、人が歩いたあとには歴史を、自然の写真からは人間の存在を感じる。写真は視点の芸術だと彼は言う。彼の写真は彼の目であり、こうあって欲しいという世界を探し続けている。

:映像と文化通信
2008年03月31日 18時42分04秒 映・文・経・社・放送からの転載

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